第一章~血の雨を降らせる男~ 【出逢い】

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(くそっ……どこだ。見失ったか?)  人込みを掻き分け、進む。  目的であった筈の舞姫の輿さえも追い抜き、あたりの様子を窺い、一度だけ深呼吸をして、目を閉じる。  常人よりも優れた聴覚。喧騒で賑わう通りから、目的のモノを聞き取ろうとする。  すれ違う人々の賑やかな声に紛れ――― 「やっ……!」 「聞こえた」  小さく消え入りそうな悲鳴を、レインの耳は捉えた。  腰元から掌程の短剣を取り、声の先へと駆ける。    彼が目指していたのは舞姫ではなく―――何者かに追われている少女。  少女は助けを求めているのか、それとも何かを訴えかけているのか……ただ、舞姫の様子を窺いながら追っ手から逃れていた。  しかし、遠目から見ても幼さがある少女の足では大の大人2人の追手を撒くことは出来ず、祭りの喧騒から少し外れた裏路地へと追い詰められていた。 (あの鎧―――……)  少女に迫った2人組の男。  彼らの着込んだ鎧の肩口に、淡い蒼の星。  それは、ウェールズ王国の紋章。 .
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