第一章~血の雨を降らせる男~ 【出逢い】

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 彼の低い声音とその言葉に、ピクリと反応を示し少女はローブの影からロッドを見上げ、しばしの睨みあい。  ――をしていたのもわずかの間で、ロッドは少女の腕を素早く掴むとひょいと抱え、レインを振り向いた。   「この子を家まで送ってくる。レイン、城へ行くのは後日に変更だ。先に戻っててくれ。  お前たち、呆けてないで行くぞ」 「あ、は、はい!」 「私は荷物じゃないわ! 降ろして! 降ろしてってば! おーろーせぇぇぇ!!」  自身の肩でジタバタする少女を気にするそぶりもなく、馴れたようにかわし、彼は足を進める。 「降ろすとまた逃げるだろう。面倒だからお断りだ。諦めなさい」 「ロッドおじさんのケチ! 意地悪! ヒゲ! つるっぱげ!!」  少女がありったけの罵詈雑言を吐いてもやはり気にする様子もなく、むしろ「はいはい」と小さな子どもをあやすように流している。  隣に控えている兵士はひやひやした表情をしているが、この場はロッドに任せて心配ないようだ。 「バカぁぁー! 降ろしてぇぇ!!」  まるで諦める気配のない少女は、彼らが遠く離れ、小さくなっていってもロッドの肩の上で暴れっぱなし。   「……すごい体力だな……」  残されたレインは彼らの背中を、ただ茫然と見送った。 .
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