第一章~血の雨を降らせる男~ 【出逢い】

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“クレア”  以前聞いたことがある。  17年前死産だった、国王の第1王女の名。  同じ名などごまんといるはずだ。なのにローブの隙間から見せた少女の冷たい瞳が引っ掛かり、彼女の素性が気になった。  ロッドを見送り、レインは答えの出ない疑問を抱えながら来た道を戻っていた。  ―――そのことに熱中し、下を向いていたのが悪かった。 「わぁ!」 「!」  足が―――冷たい。  そう感じてから改めて足元を見下ろすと、5歳程の幼女が涙を浮かべ、こちらの様子を窺っていた。 「あぁ……、ジュースをこぼしたのか。すまない、俺が前を見ていなかったからだな。ほら、新しいのを買いに行こう」  人込みに埋もれそうになっている幼女を抱き上げ、彼を近くの露店へと向かう。 .
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