第一章~血の雨を降らせる男~ 【出逢い】

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   どれにしようかと迷っている様子の幼女を見ていると、自然に彼の瞳がほんの少しだけ緩んだ――その時。 「クレア!」 「あ、ままー」  幼女の母親らしき女が、息を切らせながら駆けてくる。  うっすらと涙を浮かべているので、どうやらこの母子はこの人込みの中はぐれてしまっていたようだ。 「あのねー、おにいちゃんが抱っこしてジュースかってくれたの」 「あぁ、すみません……! ご迷惑をおかけして……」 「いや、俺がよそ見をしていてこの子のジュースをこぼしてしまったんです。何よりこの人込みだ、今度ははぐれないように。……な?」 「うん!」 「本当に……ありがとうございます」  腕に抱いていた幼女を母親のへ返すと、幼女は嬉しそうに、けれどもジュースが零れないよう器用に母親の首筋に抱きついた。 .
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