94人が本棚に入れています
本棚に追加
/937ページ
その姿に軽く安堵を覚えつつ、レインは口を開く。
「気になっていたんだが……この国は本当に“クレア”という名前が多いんですね。さっきも向こうの通りで会ったんだが……」
「あら、旅の方なんですね?
どうりで髪の色が変わっていると……えぇ、この国の女の子の名前で1番多いのは“クレア”なんです」
控えめな笑顔で答える母親にその理由を尋ねていいものかと考え込んでいると、小さなクレアがレインの服を引っ張ってきた。
「おにいちゃんジョーシキだよう? クレアは、王さまの姫さまのぶんもしやわせになるためにクレアなの」
「……解読不可能なんだが」
「おにいちゃんの髪きれいねー」
「……」
どうにも会話にならず母親に助けを求めると、彼女は吹き出しながらレインの目を見た。
「17年前、国王様の第1子が誕生したのだけど―――死産で……それからの国王様の表情は見てられないくらい哀しそうで……私、子どもながらに誓ったの。
自分に娘ができたら、この世を見ることなく旅立たれた姫様の名前を頂いて、姫様の分も幸せにしようって」
「それで……」
.
最初のコメントを投稿しよう!