第一章~血の雨を降らせる男~ 【出逢い】

16/23

94人が本棚に入れています
本棚に追加
/937ページ
 母親はクレアを抱きなおし、花開くような笑顔で娘を見つめる。 「えぇ。そう感じた民が多かったようで、今では国中で1番多い名よ。  数年前の収穫祭でそのことを知った時の国王様のお顔、今でも忘れないわ。とても嬉しそうに微笑んでらして……涙が出た」 「……幸せ、で?」 「もちろん。この子がいて、この国で平和に生きて……とても幸せよ」 「ねー、ままー」  頬を寄せ合って笑いあう母子に気付かれないよう、小さく息をもらすと、レインはクレアの小さな頭を撫でた。  優しく、慈しむように。 「大切な意味を持つ名だ。大事にしろよ?  ……じゃあ、俺はこれで」 「えぇ、本当にありがとう」 「ありがとう、あかいおにいちゃん」  2人に手を振り、彼は人込みへと消えていく。  その後ろ姿が見えなくなるまで手を振っていた母子は、どちらともなく顔を見合わせた。 .
/937ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加