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母親はクレアを抱きなおし、花開くような笑顔で娘を見つめる。
「えぇ。そう感じた民が多かったようで、今では国中で1番多い名よ。
数年前の収穫祭でそのことを知った時の国王様のお顔、今でも忘れないわ。とても嬉しそうに微笑んでらして……涙が出た」
「……幸せ、で?」
「もちろん。この子がいて、この国で平和に生きて……とても幸せよ」
「ねー、ままー」
頬を寄せ合って笑いあう母子に気付かれないよう、小さく息をもらすと、レインはクレアの小さな頭を撫でた。
優しく、慈しむように。
「大切な意味を持つ名だ。大事にしろよ?
……じゃあ、俺はこれで」
「えぇ、本当にありがとう」
「ありがとう、あかいおにいちゃん」
2人に手を振り、彼は人込みへと消えていく。
その後ろ姿が見えなくなるまで手を振っていた母子は、どちらともなく顔を見合わせた。
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