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「ままー、ぱぱよりもかっこよかったねぇ、あのおにいちゃん」
「パパには内緒よ、クレア。実はママ、ちょっとだけドキドキしちゃった」
「うん、クレアもー」
じたばたと手足を動かして、母親の言葉に納得しているクレア。
「……でも、あの人の瞳、綺麗な色をしているのに―――見てたら哀しくなったわ」
次の言葉を聞き、クレアは母親の腕に抱かれたまま、人込みに消えてしまったレインの背中を探す。
だが、何処を見ても、どれだけ目を凝らしてもその姿を見つける事は叶わない。
「またね、あかいおにいちゃん……」
いつかまた会えた時には、とびきりの笑顔を見せるから。だから、
「もう、かなしいお顔はしないでね……」
たった数分の出会い。
それだけで、母子は彼の心の闇を感じ取ってしまったようで。
傭兵レイン。
またの名を―――“血の雨を降らせる男”
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