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(この国で一番多くの子が持つ名、クレア、か……)
母子と別れ、レインは城へと向かう人波に逆らいながら歩く。
何故、この名がこんなにも気に掛かるのか。自分自身に戸惑いながら。
「よう、早かったな」
「あぁ……クロウ……」
「なんだその気のない返事は。国王にお会いして疲れたか?」
クロウ、と呼ばれた長身の男は人懐こい笑みを浮かべてレインと並んで足を進め始める。
その腰に携えた剣の柄には、銀細工の一等星をモチーフとしたエンブレムが施されている。それと同様の物がレインの腰でも光っており、見る者が見たならその素性はすぐにわかる。
知らず知らずのうちにそのエンブレムを撫で、気の抜けた声でクロウは口を開く。
「なぁ、なんで不機嫌?」
「は?」
それなりに背はあるレインだが、クロウの方が頭半分高い。自然と上から覗き込まれ、レインの眉間の皺が深くなった。
「ほらまたその顔! 何だよ、同僚には優しくしろよー」
「うるさい」
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