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(この、狸め)
こっそりと毒づき、何がと聞き返す。
国王に引き取られたのならば、贅沢三昧の筈だろう。何が可哀想だというのだろうか。
「だってよ、本人にその気がなくても周りは一市民としてはみてくれないだろ。しかも国王の反対一派に人質として狙われたこともあるそうだし。
いくら帰る場所があるったって、自由がなけりゃ心の底から幸せとは言えないだろう」
「自由って?」
「命を狙われる危険もあるからと、城の奥深くで兵士何人かに護衛されながら暮らしてるってよ。気を使ってるんだろう国王にゃ悪いが、あれじゃ幽閉だ」
彼女はまだ15歳の少女だという。
本来ならば、レイン達の傍を友人たちと笑いながら駆けていく少年少女に混ざっていてもおかしくはない年齢。
友人はおらず、小さな頃から城でひっそりと暮らしてきたのならば、クロウの言いたいこともわかる。
「でもま、立派に反抗もしてるみたいだけどな」
「反抗って?」
レインの問いかけに咽をならし、笑う。
わからないのか、とでも言うように。
「お前も見たんだろ、彼女の逃走劇を」
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