第一章~血の雨を降らせる男~ 【来訪者】

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「実力があるからこそ噂があるんじゃないのか?  ――ブラッディ・レインさん」 「変な名で呼ぶな」  ――彼がこの国に来た時、激しい雨が降っていた。  降りしきる雨の中、彼はやって来た。  緋色の髪を濡らし、まるで血に塗れた姿で――。  その時の姿が噂になり、やがて“血の雨を降らせる男”と呼ばれるようになっていた。 「別に俺は、血の雨なんか降らせてない」 「だけど襲って来た賊をあっという間に血まみれにしたんだろ?」 「……それは……、正解だけど、ちょっと違う」  軽く眉根を寄せ、クロウを見遣る。  黄金の右目が、ゆらりと揺れた。 「……血まみれにはしたけど、殺しちゃいない」 「何それ」  ふは、と笑い、クロウは新たな客を席に案内すべくカウンターから出ていく。 (……血の雨、か……)  自身の掌をじっと見つめる彼に、外の騒ぎの声は聞こえない。 .
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