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しばしぼうっとしていたレインは、クロウが店の入口で慌てふためきながら何やら口走っているのを耳に捕らえ、そちらに視線をくれる。
若干死角になっておりよくわからないが……どうやら訪れた客に問題があるようだ。
視界の隅に映る、客が乗ってきたのであろう馬車。
それには見事な装飾が施されており、一般階級の人間ではないと物語っている。
「……クロウ、どうした」
「あ、あぁ、レイン、奥、奥の部屋だ」
未だ動揺を隠せていないクロウはまともに喋る事すらできていない。
だが、彼の言いたい事を瞬時に理解したレインは直ぐさま奥にある部屋へと向かう。
ほんの一握りの客だけが入る事を許された、防音防魔法の部屋。
ここでいかなる話をしようとも、外には決して洩れず、魔法による襲撃も不可能。
(そんな部屋に、何のアポも取れず入れる客ってどんなだよ)
軽く部屋を片しながらごちり、レインはその客を迎えるべく顔を上げた。
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