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待っていたのは、目深に黒いローブを被った男……と思わしき人物。
そのローブの生地がここいらでは決して手に入らない物だったので、確かな上客だと認識する。
「……その髪の色……君が“血の雨を降らせる男”か?」
突然問い掛けられ、無駄に息を吸い込んでしまい、噎せそうになるのを堪える。
そして、金色の瞳が困惑に揺れるのをそのままに、肯定の言葉を吐き出す。
「そうか……今時間はあるか? 君と話がしたい」
「は?」
見ず知らずの来訪者の問い掛けに、またもや困惑しながらクロウを見遣る。
―――と、彼は顔を激しく上下に振り、手で大きな丸を作っていた。
「……。大丈夫、みたいです」
「そうか、それはよかった」
客人が後ろ手で扉を閉めると、酒場での喧騒が嘘かのような静寂が部屋を包み込んだ。
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