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慣れた動作で来訪者は座り、レインにも座るよう促した。
互いに緊張しているのか、些か張り詰めた空気が漂う。
先に沈黙を破ったのは、レイン。
「俺に何の用ですか」
短く問い掛けると、来訪者は思い出したかのようにはっとなりながらも、テーブルの上で遊ばせていた手をローブに掛ける。
「失礼。このままでは話がしづらいな」
歩き方、仕種などすべてが優雅だったので一般市民ではないと思っていた。
貴族か、或いは王族か。
だが、ローブから現れた顔はレインの予想を遥かに越えた人物。
「クロウ君にはばれていたようだが……君は気付いてなかったみたいだな」
その人はにこりと微笑む。
綺麗に撫で付けられた髪。
一寸の狂いもなく整えられた口髭。
そして、きりりとした眉がその人の精悍な顔付きを際立たせている。
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