第一章~血の雨を降らせる男~ 【来訪者】

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「――ア、アグレス国王……?」  柄にもなく目を見開き、わななく唇が零したその人の名。  そんな彼の様子を、満足げに微笑みながら見ている、ウェールス国国王――アグレス。 「何故国王が俺、……いや、私に――」 「そう固くならなくても良いよ。今日は公務ではなく私用で来ているのだから」  くっと喉を鳴らして笑いながら、国王は部屋の隅にある小さな棚を開けた。 「勝手知ったる人の店……まぁ酒でも飲んで緊張を解してくれないか?  この酒は私の好きな東の国の物でな。ロッドに無理を言って揃えさせたのだ」  くしゃりと笑ったその表情は、一国の王とは思えない程穏やかで、気さくであった。  国王が差し出した酒ではなく、彼自身が纏う雰囲気に、緊張が解れていくのを――感じた。 .
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