第一章~血の雨を降らせる男~ 【来訪者】

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 差し出されたそれは、本来ならばロッドと共に城へ行き、受け取る筈だった物。 「Sクラスの通行証……これをわざわざ、国王御本人が?」  ウェールズ王国に一度入国すると、国内では身分証明がないと宿に泊まる事は疎か、出国する事すら簡単には出来なくなる。  東の国からふらりときたレインは身分証明など無く、ロッドに拾われていなければ今頃は路頭に迷っていただろう。 「君の功績は私の耳にもよく入ってくる。それを持っていた方が傭兵の仕事もしやすいだろう」 「はぁ……」  国王の言う通行証とは、持っていればウェールズ国民でなくともそれ相応の待遇となる物。  しかもSクラスのそれとなると、待遇は貴族並となる。  通常、通行証自体を手に入れるのは至難の技とされており、身分証明を持たぬ殆どの旅人はそれなど持たず、曖昧に日々を過ごしている。 「……」 .
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