第一章~血の雨を降らせる男~ 【来訪者】

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「頼みというのは――」   躊躇いがちに唇を開き、また閉じる。  そんなアグレスを真っすぐな金と黒の瞳が捕らえている。  最後の言葉まで、きちんと受け止める為に。 「頼みというのは……ある、少女の事だ」 “ある少女”  それだけで、レインの脳裏に昼間の少女が浮かんだ。  ――と同時に唇は開き、アグレスに問いかけていた。 「それはクレアという少女の事ですか」と。 「な、ぜそれを……」  今度目を見開くのは、アグレスの番。  レインの問いかけに余程驚いたのか、腰を浮かせ、口を魚のようにぱくぱくとさせていた。 「今日、城に行けなかった理由はそれです。ロッドからお聞きではないのですか?」 「いや、ロッドには会っておらん」  気が抜けたように、椅子に座りなおし、一度大きく息を吐き出すと整えられた髪をぐしゃりと掴む。 .
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