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ポツリ、ポツリと空から滴が舞い落ちる。
それでも国王は口を閉ざし、遠くを見つめたまま。
雨に濡れながら何を思っているのか――誰もが皆、指ひとつ動かせないまま、ただ無情に時だけが過ぎていく。
「……」
ふと、国王の頬に、雨とは違う何かが滑る。
それを目にした民は、わかりたくもない真実を悟った。
「国王……」
気づきたくもない真実。
「私の……」
激しくなっていく雨。
けれど彼の声は、眼下で見守る国民の耳に、……心に届く。
「私と妻―――サーシャの子は……希望の子は……死産、であった……。皆の者、すまん……」
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