〔prologue〕

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2010年 2月1日 芦八市 ジュネス芦八店 「結局またハズレかよ…」 呟いた男の手には数枚の宝くじが握られていた。 「俺も今年で三十路……いつまでも平なんかやってないでパアッと花開きたいもんだぜ……」 ため息をつき、しわくちゃにした宝くじを見ながらそんなことを口にしていた。 男の名は石田猛【いしだたけし】。しがない小規模会社の平社員だ。7年前に地元の大学を卒業後、何をトチ狂ったか寿司職人を夢見て都会に上京、しかし自分の才能の無さに気づき5年前にベッドタウンであった芦八市に身を置く、それからは派遣をする内に今の会社に落ち着いた。 気がつけば自分はいい歳したおっさん。だが収入は低層、彼女無し、親とは連絡をとっていない。それでも借金だけはせずに細々と食いつないできた。 「3億くらい軽く当ててよぉ、アメリカかどっか外国に飛んで、優雅な生活を送りたいぜぇ。」 そんな夢ばかり見てきた通称ダメ人間の石田は真面目に仕事もせずただただ金だけを貰うために仕事をし、ギャンブルに生活費以外の全て金を注ぎ込み、墜落してゆく人生を送っていた。
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