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部屋の窓から父親の乗るパジェロが、走り去るのを採斗はぼんやりと見つめていた。
「子供を悲しませんなよ。バカ親。」
吐き捨てた採斗の脳裏に12年前のことが思い浮かんできた。
玄関で血だらけになり、目からは生気が失われ息絶えていく母親。その背後には見覚えのない男。
当時5歳だった子供が目の前で母親を亡くすショック。理解のできない状況の中、自分の叫び声だけか耳に飛び込んでくる。
「なんで今になって思い出すんだよ」
忘れていた、忘れようとしていた過去の事を思い出してしまい、消えてしまいたい衝動に駆られた採斗は勢いよくカーテンに手をとり閉めようとした時、ふと窓の外に見える田んぼの真ん中にどんと佇む森から一瞬光が見えたような気がし、カーテンから手を離してついさっき光が見えたとこを凝視する。
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