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両親がいた頃は少々手狭に感じていたこのマンションの一室も、今となっては広すぎる。
「ごちそうさまでした」
朝食になったパン、コーヒーや、それらを買うお金を仕送りしてくれている両親に言うつもりで、声に出して"ごちそうさま"を言う。
「朝食も食べ終わったし、そろそろ出かける準備をしないと遅刻してしまう……。
ちょっと急ぐか」
とそこまで口に出して、僕は制服に着替え始めた。
最近、自分でも気付いているが、独り言が多くなってしまった。
家で言う分にはまだましだが、学校では気をつけないと。
φ
――ガタンゴトン、ガタンゴトン――
『私立ー夢望学園前駅ー
御降りの方はー右側扉からー……』
車内アナウンスを聞きながら、通学時にいつも読んでいる文庫本のページを閉じる。
ケンジがヨシタカさんに秘密の鍵のありかを教えてもらう、すごくいい場面だったが仕方ない。
本を鞄にしまって、席を立った。
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