第一話 白い太陽

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 車内に客は少ない。  これもいつもどおりのことで、僕の家からだと、ラッシュアワーに電車に乗っていたら遅刻は免れないのだ。  それにしても、この時間帯に登校してくる生徒は少ないものだ。  同じ車両には一人も乗っていなかった。  改札を出るときに、せいぜい二人見る程度だ。  駅名からも想像できるように、駅を出るとすぐに学園に着く。  本当に"目と鼻の先"といえる距離にあるその学園は、さながら迷える子羊助ける、神の両腕のような造りをしていた。というか、本当にそんなコンセプトで建てられたそうだ。  簡単に言うと、校舎が全体的に扇形に建てられているということだ。  校門を入って正面には、ちょっとしたロータリーがあり、その中心には巨大な十字架が立っている。  初めはこれにもびっくりしていたが、一ヶ月も見ていれば、自然と慣れてしまった。  人間は、慣れることができる生物だ――と言ったのは誰だったかな。  その十字架の向こう側には本校舎があり、それの左右に、十字架を囲むような形で教室棟と部活棟が建てられている。  これらの校舎を上空から見ると、校門から入ってくる生徒を、校舎=神が優しく迎え入れているように見える――と言っていたのは校長だったが。  とにかく、この学園は変な造りをしている。
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