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女の子がいつも以上に千尋と私の動向を探るのはチョコを渡したいから。
私が千尋と離れるのを今か今かと待っている。そして、千尋が一人になったところを見計らって砂糖に群がる蟻のようにやって来るに違いない。
去年は山のように貰っていた、と聞いてもいないのに皆が教えてくれた。
千尋は無視しようとしたみたいだけれど、勝手に下駄箱や机やロッカーに置いて行かれて諦めて受け取っていたらしい。
恐らく、私がいてもチョコを渡してくる子だって現れる筈。そんな現場を見たくない、と思ってしまうのは普通の心理だと思う。
でも、矢野千尋の彼女は恐らくもっと堂々としていないといけないらしい。
千尋は靴を履き替えた私の手をもう一度握り直して歩き出した。
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