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事務所を出るとすぐにバス停がある。
この時間はまだ便があり、向かう居酒屋は、このバスに乗って3つ目のバス停になる。
「タイミングいいな」
すぐにバスが入ってきて、あたしたちは乗り込んだ。
バスの中は比較的空いていたけど、二人で一番後ろの席に腰掛けた。
「傍に寄らないでよ」
「いいじゃん」
窓側に座ったあたしの隣に竜二が座る。
肩と膝がぴったりとくっ付いてるんですけど。
「昔、ばあちゃんから聞いたことあるんだけど、お前、三途の川って知ってる?」
「死んだら渡る川でしょう?てか、なんで今三途の川の話?」
くっ付く膝を避けるように、あたしは足を組んだ。
「いやあ、何気に思い出しちゃって。三途の川って、渡り舟の前に婆が居て、見合う金額を渡せば渡り舟に乗せてくれるんだって。」
こっそりと顔を近付け、竜二はあたしに耳打ちしてきた。
タバコの残り香が漂う。
あたしはタバコは吸わないけど、竜二のタバコの香りは嫌いじゃない。
「あのリーマン、服に値札のタグ付いてる」
あ、ほんとだ。
「笑っちゃダメ」
肩を震わせて笑いを堪えている竜二の鳩尾を軽くこずいた。
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