プロローグ

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言いたい事はたくさんあった。 どうして今頃?どうしてあの時言ってくれなかったの?苦しくて苦しくてたくさん泣いた。 やっと忘れて立ち直って動き出しているのに。今になってどうして?いったい何を言い出すの?私が必要としている時は一人置き去りで。一人でやっと立ち上がったのに。 もう、いらないよ…… そんな思いが次々と沸いてきたけれどやはり一言も何も言えなかった。 どれくらい沈黙していたかわからない。母親が脇で私をにらんでいた。 「ごめん。無理……なんだね。」 何も答えられなかった。そのままずっと沈黙が続いた。 「じゃ、切るね。」 ようやく彼はそう言うと電話を切った。母親が 「覆水盆にかえらずと言うのよ。終わったものはどうにもならない。終わりにしなさい。」 と冷たく言った。 「わかってる。」 私は言った。
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