プロローグ

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その晩は翌日何を着て行こうかとあれこれ悩みながら嬉しくてたまらなかった。まさに狙ったターゲットをゲットした気分。 しかも早川が合コンの場で先手を打つようにデートを宣言してくれた事が私をさらに有頂天にさせていた。 絶対に外せない。バッチリきめていきたいところで私は悩みに悩んだ。 早川に合わせて大人のテイストにしてみるか、いやかわいい路線で行くべきか。コーディネートはなかなか決まらなかった。 次の日、早川は車で迎えに来てくれた。助手席に乗りこむ時は緊張とうれしさで舞い上がっていた。 それを悟られまいと涼しい表情を作ってみようとするがうまくいかない。なんとか顔がほてらないようにするのが精一杯だった。 それまでも付き合った人とドライブは何度もしていたがそれとは違った緊張感があった。 車種に疎かったのでよくわからなかったがとにかくデート向けの車ではなかった。日常的に仕事にも使っている車というのが一見してわかった。 後部座席には工具の入った箱や仕事の書類が入ったようなものが置かれていた。それを見てまた掛け離れた男の世界観を意識して緊張した。 「ごめんね、汚くて。」 と早川は言った。 私はドキドキしていて 「全然。気にしないで。」 とかなんとか、もごもごと言ったような気がする。 待ち望んだデートなのに車に乗っても何を話していいかわからなかった。会話がとぎれがちになっても早川は一向に気にする風でもないのが余裕に感じられて私は余計に焦った。 「さあ、どうしようか。映画でもみようか。」 と早川は言った後にっこり笑った。とても太刀打ち出来ない魅力的な笑顔だった。 私は催眠術にでもかかったようにこくりと頷いた。すっかり魅了されてしまった。
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