プロローグ

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ほんの数日前のこと。 二人でラブホテルから出てきて居酒屋で飲んでいた時だった。彼は私にベタ惚れといった状態でとろけるような目で私を見ながら 「なあ、俺達このままずっといったら結婚しよう。ミズキはまだ三年だけどもう少しで四年になるわけだし」 そう言った。私も彼が大好きだったから頷いて彼にしなだれかかると店員の目を盗んでキスをした。彼は感に堪えないという様子で私をギュッと抱き寄せた。 わずか一週間も経たないうちに吐いたセリフが 「結婚を前提に付き合っていますっていうつもりはない。」 という断言。しかもついさっき 「かわいい、綺麗だよ。ミズキ愛してる。」 なんて何度も言いながら夢中で私を抱いたくせに。裏切られたようなしらけた気分だった。 すぐに結婚などとは考えていなかったけれど彼は社会人で私もあと約一年で卒業。このままつき合っていけば結婚するかもしれないなと思っていた。 強烈な両親に怖じけづいたのはわかったが言い切るその言い方がショックだった。 正直な彼としては自分はまだそういう事が言える立場じゃない、そういう事がいえるほどの人間じゃないという事が言いたかったらしい。 「嘘をつくのは信条に反するから」 というような事を言った。 「じゃあどうするの?嘘をつくのも嫌。結婚を前提に付き合ってるから認めてくださいとは言うつもりはない。でも別れたくないって。わたし、わからないよ」 私は彼の真意がわからなくなり傷ついたまましばらく距離をおく事になった。
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