first chapter

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一歩目を踏み出すと同時に剣を大きく振り、その風圧だけで風の刃を相殺する。 ミレイにとっては全く初めて見る力を前に、フレンはその対応を心得ているようだ。 そのまま彼は足を止めず、再び別の言葉を紡ぎ始めたカルロスに駆け寄る。 「っクソ、ファイアボール!」 至近距離になって何とか間に合ったその力は、次は何処からともなく火の玉を生み出しフレンに襲い掛かる。 それすら軽い身のこなしと剣でかわし、フレンはまたカルロスに接近し剣を振った。 ギリギリの所で後退し左腕にかすり傷を負った程度で済んだカルロスを前に、フレンは今度はその場で剣を振る。 その風は鋭く、舞い落ちる木の葉さえ引き裂いた。 風の届く距離を測るかのようにじっと見ながら、カルロスはまた更に後退する。 だがフレンもそれだけで済ませることは無く、既にまたカルロスとの距離を詰めて来ていた。 消えた風を追い越すようにカルロスの懐へ入ったフレンの剣を、彼はかわさずに敢えて手で止める。 いつの間にか止めた手に纏っていた透明な薄い力の膜のおかげで、カルロス自身はその剣での傷を負ってはいなかった。
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