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昔むかしのお話です。
遠い世界の遠い国。その一角。
そこには一人の小さな少年が、両親と兄と、四人で暮らしていました。
国では、少年が生まれるより前から始まった戦争が、いつ終わるとも知れず続いています。
争うは、二つの勢力。
この世界の大部分を占める大魔術帝国、それとの共存を望む連立派。
一方は、自分達の国は自分達で発展させていくべきとする、独立派。
少年の父と、年の離れた兄も、毎日戦争に出掛けて行っていました。
家では母と少年が、二人で帰りを待っています。
しかし、ある日を境に、父も兄も姿を消してしまいました。
やがて、家に居た母と少年にも知らせが入ります。
父と兄は、戦争によって命を失ってしまったとのことでした。
元々病弱であった母は嘆き、病に伏せってしまいます。
父からも兄からも何も教わっていなかった少年は、戦う術(スベ)も知らず、ただ悲しむことしか出来ませんでした。
家を飛び出し、戦争の実態を目(マ)の当たりにした少年は、自分が何の力も持っていないことに気付きます。
母を守る力すら無い、無力な子供に過ぎないのだと。
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