first chapter

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「“シェーンベルク”っていやあ、“クレネイド”家に並ぶ貴族の一族じゃねぇか。しかも女の子はあんま家から出してもらえねぇって聞くぜ。  そんな箱入りのお嬢様が、こんなシケた所に何の用だ?」 「カルロス。  初対面の方に何て物言いだ」 ふっと息をつき、青年――カルロス・エイリットを窘(タシナ)めるように言うが、そのフレンの声は静かなままだ。 この人間万国は世界的にも貧しい国であり、クレネイド家やシェーンベルク家のような貴族の家は少ない。 むしろフレンもカルロスも、この両家の他にはヴィルヘルム家しか無いと記憶している。 言い方に問題があるにせよ、カルロスの問いは尤もだ。 フードの下でフレンは一度目を閉じ、それから剣を腰の鞘に仕舞うなりフードを肩に落とす。 「失礼致しました。彼にも悪気はありませんので、どうかお許し下さい。  後になってしまいましたが、俺はフレン・ド・ロス・クレネイド、彼はカルロス・エイリットです。お見知り置きを」 かつて教わったように、貴族らしく丁寧な言葉を意識し、フレンは言った。 頭を下げる動作と共に、彼の柔らかな薄茶の髪も揺れる。
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