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「“シェーンベルク”っていやあ、“クレネイド”家に並ぶ貴族の一族じゃねぇか。しかも女の子はあんま家から出してもらえねぇって聞くぜ。
そんな箱入りのお嬢様が、こんなシケた所に何の用だ?」
「カルロス。
初対面の方に何て物言いだ」
ふっと息をつき、青年――カルロス・エイリットを窘(タシナ)めるように言うが、そのフレンの声は静かなままだ。
この人間万国は世界的にも貧しい国であり、クレネイド家やシェーンベルク家のような貴族の家は少ない。
むしろフレンもカルロスも、この両家の他にはヴィルヘルム家しか無いと記憶している。
言い方に問題があるにせよ、カルロスの問いは尤もだ。
フードの下でフレンは一度目を閉じ、それから剣を腰の鞘に仕舞うなりフードを肩に落とす。
「失礼致しました。彼にも悪気はありませんので、どうかお許し下さい。
後になってしまいましたが、俺はフレン・ド・ロス・クレネイド、彼はカルロス・エイリットです。お見知り置きを」
かつて教わったように、貴族らしく丁寧な言葉を意識し、フレンは言った。
頭を下げる動作と共に、彼の柔らかな薄茶の髪も揺れる。
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