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その青い瞳は何処までも深く、何だか“視(ミ)え”ない。
じっとその目をミレイに向け、彼は続けて口を開いた。
「えと……ミレイ、さん?
女性がこの様な場所へ来るのは危険かと思うのですが、一体何故……」
「………」
問いに、ミレイは答えない。
ただフレンをじっと見つめたまま、動かず立っていた。
それを見たフレンは慌てて手を振る。
言うのが嫌なら無理に答える必要は無いと。
フレンのその言葉に、ミレイはふっと目を細めた。
口元は相変わらずの一本線。
それでもただそれだけで、彼女の優しげな印象は増す。
言葉を失ったフレンは、彼女から目を逸らすことも出来なかった。
「父が……亡くなりました。
元々父一人子一人。他に身寄りは居(オ)りません。
このご時世ですから、珍しい話でも無いと思います」
「あ…………」
「この国に不釣り合いな広い家に一人遺(ノコ)され……私は、行き場の無い寂しさを紛らわせたかったのでしょう。
食事と睡眠以外はろくに家にも帰らず、ただ国内を彷徨っています」
淡々と、だが瞳を伏せ、ミレイは言う。
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