《九章》夢の中へ

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女の子がそう言って三蔵一行に頭をさげると、涼鈴が女の子に話しかける。 「ねぇ、さっき“お姉さまの木”って言ったでしょ。あれってどういう事なの?」 「この木は、あちしの一番上のお姉さま桔花公主(きっかこうしゅ)の木なんでありまする。みなさまにもご覧になっていただきまする」 女の子はそう言うと桜の木にむかい、何やら不思議な言葉を発する。 「おん、ま、に、はつ、に……うん!!」 すると桜の木から一人の女性が姿を現した。 「ひゃあああ!木から女の人が生えてきたで!」 八戒は腰を抜かす。 「この人……間違いない!私の夢の中に出てきた人だわ!」 三蔵は姿を現した女性の顔を見て叫んだ。 「お姉さまは、この桜花原を守る桜の精霊の長でありまする。しかし、十六年前にこの木に雷が落ちまして、その時から眠り続けてるです。あちしは困って困って困って困ってじたばたしてるです。どうにかなるならどうにかしたいです……どうにかなるですか?」 女の子がそう言うと、三蔵一行は考え込む。 「どうにか……と言ってもな。ま、なんとかして起こすしかないだろうよ」 悟浄が眉間にしわをよせながら言う。
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