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―私の名は陳 玄娘(ちん げんじょう)。赤ん坊の私は川に流されていたところを金山寺の法明長老に拾われました。
その時の私はきれいな布にくるまれていましたが、身元がわかるものは、なにもなかったそうです。
法明長老は私をひきとり、お寺の使用人として住まわせてくれました。
それから十六年の歳月がながれたある日のこと、私は夢を見ました―
「‥‥ここは‥‥?」
玄娘は何もない暗闇の中を歩いていた。
「げんじょう‥‥玄娘よ‥‥」
どこからともなく私の名を呼ぶ声が聞こえ、辺りが眩しく光りだす。
しばらくすると、玄娘の目の前に何者かが現れた。
「えっ!?あ、あなたは??」
「私は観音菩薩‥‥おまえに頼みがあります」
玄娘は観音菩薩と聞いて驚いた。
「か、観音さま!?‥‥わ、私にいったい何を‥‥!?」
観音菩薩と名乗った者は、一本の錫杖(しゃくじょう)を玄娘の前にさしだした。
「よいですか。しっかりとお聞きなさい。この錫杖を持ち、天竺にある大雷音寺にくるのです。わかりましたね‥‥」
「て、天竺ですって!?どうして私が‥‥!?」
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