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「ハア…ハア…」 “あれ”は何だ? 人間らしさの全くない狂ってしまった人。 浅葱色の羽織りをまとっている。 「ひゃはははは!」 甲高い笑い声をあげ追いかけてくる。 袴をはいていて正解だったな、走りやすい。 まあ“あれ”なんて切れない事もない…が、 面倒事には巻き込まれたくない… 私は目に入った物影に飛び込む。 しかしそこには先客が… 歳は私と同じぐらいだろうか、袴をはいていることから男の子か…? 息を切らして、怯えた目をしている。 大方この子も何かから逃げてきたのだろう。 先客は飛び込んだ私にビックリしていた。 多分、敵とでも勘違いしたのだろう。 私はそっと声をかけた。 「安心しろ、敵ではない。少し身を隠したいだけだ。」 私がそう言うと、何かを言うとしたのか、彼が口を開いた時。 「クソッ!逃げ足の早い小僧だ。探せ!まだ遠くには行ってないはずだ」 声が聞こえた。 私はそっと物影から様子を覗いた。 三人の浪士が誰かを探している。 多分この子だろう。 浪士は私達が隠れている物影の方にゆっくりと歩いてくる。 「ぎゃぁぁぁー」 「ひゃはははは!」 突然、浪士の悲鳴が聞こえた。それと同時に“あれ”の甲高い笑い声。 “あれ”は、浪士達を殺し、すでに息のない死体を狂ったように、刺したり、裂いたりし、かえり血で浅葱色の羽織りを真っ赤に濡らしている。 このあと私は隣で震えている彼を押さえていなかった事を後悔する。 “あれ”がこちらを見た、といってもただ顔をあげただけかもしれない。 それを見つかったのだと勘違いした彼は一歩後ずさり、 ゴンッ ガラガラ! 立てかけてあった木の棒を倒してしまった。 すると完全に私達に気付き、新しい獲物を見つけたように笑い声をあげながら、ちかずいてくる。
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