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しかたない…
「さがって。」
彼にそう言うと、腰にさした刀に手をかけた。
そして一人の心臓を正確に貫いた。
その瞬間、もうひとつ、肉を断つ鈍い音が聞こえた。
男達と同じ羽織りをまとった男が私が斬った男の後にいたもう一人の男を後から刺したのだ。
「あーあ、残念だな…」
そのとき、辻からもう一人、若者が姿を現した。
「僕一人で始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんなときに限って仕事が速いよね」
っと言いながら、彼は千早と後で腰をぬかしている少年に向かってニッと笑いかけた。
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ…それに、俺は一人しか…」
っと言って、ちらりと千早を見る。
次の瞬間、後でもう一人の気配がし、振り向くと浅葱色の羽織姿の男が音もなくスッと少年に刀を突き付けた。
それと同時に少年に刀を突き付ける男に、千早も刀を突き付ける。
しかし男は顔色を変えずに静かに言った。
「いいか、逃げるなよ。背を向ければ、斬る」
「それはこっちの台詞だ。その子に手を出すな」
すると男はちらりと千早を見て刀をしまう。
そして少しの間を置いて、千早も刀をしまう。
「副長、死体の処理は如何様に?」
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