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「女…だったんで「まて」
千早はそっと千鶴の言葉を止め、部屋の入口の障子を睨んだ。
「人の気配だ。」
千鶴も障子の方を見た瞬間、障子がスッと開いた。
「目が覚めたかい?」
千早と千鶴の予想に反して、入ってきたのは温和な感じのする中年の男だった。
「すまんなぁ。こんな扱いで…。ああ、総司のやつこんなにきつく縛ったのか」
「ああ、それはもう楽しそうに縛ってましたよ」
千早が言うと中年の男はため息をついて、
「今縄を緩めるから待っていておくれ」
っと言って、縄を緩めてくれた。
しかし縄は手から外されることはなかった。
そして千鶴がおずおずと口を開いた。
「あ…あの……。ここは何処ですか?あなたは一体…?」
「ああ、失礼…。私は井上源三郎。ここは新選組の屯所だ」
新選組…人斬り集団…
誰彼かまわず斬り捨てる。京の町では恐れられ、人々にたいそう嫌われているという…。
「ちょっと来てくれるかい?今朝から幹部連中で、あんたらについて話し合ってるんだが…」
「幹部…?」
話が飲み込めない千鶴は聞き返した。
「ああ、広間に集まっるから、来ればわかる。」
「私はかまわない」
そういって千早が立ち上がると、千鶴も慌てて立ち上がると、三人で広間へ向かった。
千早は広間へ向かいながら、千鶴に京へ来たわけを聞き損ねた事を思い出していた。
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