決意

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「さあ、好きなのを選ぶがよい」  王である父が、白いヒゲを揺らし、自慢げに腕を広げた。  椅子に腰掛け背筋を伸ばし、手を重ね膝の上に置き、少しあごを引いた娘たち。ざっと十名。長い机を挟んで向かい合っている。  月に一度家族で行う晩餐会の部屋に呼び出されたかと思えば一体これは何のつもりか。 「三番目の王子には彼女ができた、お前もそろそろ、本当の彼女を作るべきだ」  重厚な扉の前から動こうとはしない僕に近づいてくる王。 「僕は僕自身で相手を探します。あなたに探してもらおうとは全く思っておりません」  メガネを外し、胸ポケットから出したハンカチでキュッと拭く。メガネをかけ直すと、ハンカチを三角に折りたたみ胸ポケットに収めた。天井に吊されたシャンデリアが目の端にちらつく。 「そう言ってる間に、弟に先に証を達成されたらどうするつもりだ」  近づいてきた王に見下ろされる。身長的には僕の方が高いのだが、その威圧感と鋭い目つきに少し笑いたくなる。 「その時はその時に考えます」  この王は弟がすでに証を達成していることを知らない。皆が僕を王にするために隠しているからだ。僕には王の姿は滑稽に見えて仕方がない。 「用事というのはそれだけですか」  僕は後ろの扉に手をかけた。同じような化粧、同じような格好や態度をするありきたりの女はもう飽きた。 「それとはなんだ、わが国にとっては大変重要なことだぞ!」  僕は王の言葉を聞き流し、堪えきれずに部屋を出る。閉めた扉からは、王の罵声がもれてきた。
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