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だんだんと、街が騒がしくなっていく。それに自分の誕生日が関係しているかと思うと、面倒くさい。街が活気づくのはいいが……ツィーニと違って騒ぎが苦手だから。
「イチ兄様」
仕事部屋で書類を片付けていると、フォースがドアから顔だけのぞかせている。
「……ノックをしなさい」
ふう、と息をつき、フォースを見やる。フォースはそのままの状態で、ノックを二回した。顔を赤くし、にこにこ笑っている。
「何用だ」
部屋に入ってくるなり、フォースはパチパチと手を叩いた。
「誕生日おめでとうございます」
その様子が可愛く、思わず顔がゆるむ。正装までして。
「ありがとう。しかし、僕の誕生日はもう少し先だ」
くすっと笑うと、フォースはうん、と頷く。
「知ってるよ! でも、誰よりも早くお祝いしたかったんだよ」
「……そうか、ありがとう」
フォースはポケットから出した手紙をくれた。
「これは?」
「そこにいた人に渡してくれって言われた」
「誰だ?」
手紙を裏返しても名前は無い。なにかの罠だろうか。しかし一般の人間は、ここに来ることは不可能である。
「知らない女の人」
フォースのこたえを聞きながら、薄いブルーの封筒を開けた。
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