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「それでは、詳しいことは従者に手紙を渡しますので」
ラスターは丁寧にお辞儀をすると、マギーから離れ、家路についた。残されたマギーは、三日月を見上げる。
「……美しい三日月ですわね」
昔を思い出すわ。マギーは三日月に背を向け、待たせておいた馬車に乗り込んだ。
「家に帰りますわ」
「かしこまりました」
カラカラ、静かな夜に馬車の動く音だけが響いた。
「私は最低ですわ……」
馬車のかごの中で、マギーは泣きたい気持ちを必死に抑える。内密に行われる小さなパーティーを知ったのは、王様の助言。参加なさい、そう言われた。一番扱いやすいラスターに参加を請え、と。そんなことを言う王様には反感を持ったが、行動した私も同罪。
「惚れた弱み……か」
マギーは小さくなる城を少しだけ振り返った。
「今日は冷えるわね」
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