準備

8/8
320人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「それでは、詳しいことは従者に手紙を渡しますので」  ラスターは丁寧にお辞儀をすると、マギーから離れ、家路についた。残されたマギーは、三日月を見上げる。 「……美しい三日月ですわね」  昔を思い出すわ。マギーは三日月に背を向け、待たせておいた馬車に乗り込んだ。 「家に帰りますわ」 「かしこまりました」  カラカラ、静かな夜に馬車の動く音だけが響いた。 「私は最低ですわ……」  馬車のかごの中で、マギーは泣きたい気持ちを必死に抑える。内密に行われる小さなパーティーを知ったのは、王様の助言。参加なさい、そう言われた。一番扱いやすいラスターに参加を請え、と。そんなことを言う王様には反感を持ったが、行動した私も同罪。 「惚れた弱み……か」  マギーは小さくなる城を少しだけ振り返った。 「今日は冷えるわね」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!