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運動会が終わり、PTAの役員も家路についた。
進二は、子供と風呂に入り汗を流した。
風呂上がりに軽くビールを引っかけようと、台所に入った。
「あなた、ビールはだめよ。」
冷蔵庫に伸ばしかけた手を止め、
「えっ?なんで、風呂上がりのビールは美味いのに?」
「あら、わすれてんの?PTAの役員は打ち上げが、あるんでしょ。」
「いっ?あっ、そうか!完全に頭のスミにもなかったわ。七時からだったなぁ。」
「仕方ない人ねぇ。場所はわかるの?」
「ん?駅前の「武蔵野」だよ。それは大丈夫さ。」
進二は、やべぇ、と心の中で舌打ちしていた。
「ほんなら、着替えて支度するわ。サンキュー。」
「そうね、みなさんのお邪魔にならないようにしてね。」
紀子の面白がるような視線を感じながら、進二はあわてて支度をはじめた。
六時半過ぎには自宅を出て駅前に向かった。
「武蔵野」に入ると、すでに何人かの役員が車座になり、今日の運動会から、来年はどうするかなど、ワイワイと話が弾んでいた。
「福井さん、こっちこっち。先生達が来るまでに打ち合わせしましょう。」
「あっ、前田さん。あなたも役員だったんですか!助かったぁ、知り合いの人がいると安心ですね。初めてなもんで、よろしくたのんます。」
「えっ、福井さんも、実は私も初めてなんですわ。」
「えぇ?そうなんですかぁ!でも、お互い初めてなら気楽ですね。」
「そうそう、知らんから知らん顔してられるしね。ふふ、、。」
お互いに顔を見合わせ、笑いあった。
宴会が始まる頃には、PTAの役員、小学校の職員も全員そろい、PTA会長と校長の乾杯の音頭で宴会がはじまった。
進二は顔見知りの前田と、運動会での我が子のことや父兄競技での失敗など、面白おかしく話して、盛り上がっていた。
「そうそう福井さん、あの借り物競争の時、どうでした?」
「へっ?あぁ、うちの子の担任の先生でしょ。変なことはできませんて!なんて、あの先生、美人ですからねぇ。」
「ふふ、そうですよねぇ。でも、ほんのちょっとでも一緒にいられたんやから、福井さんがうらやましい。あははっ!」
「またぁ、あの先生は、うちの団地ですよ、前田さん。」
片目をつぶり、前田にウィンクした。
「えっ?うちの団地?うへっ!やべっ、話題変えましょかぁ。」
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