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前田は驚き、慌てたように話題を変えた。
「そうそう、今度の廃品回収は集まりそうかなぁ?人がこないと仕事が進まないからなぁ。」
進一は、ぷっと吹き出しそうになるのをこらえて、
「廃品回収は大丈夫でしょ。なんせ、貯めといたやつを一気に処分できますからね。」
「なるほど、そうだね。おっ、校長がなんかやるよ。」
上座の真ん中に校長が立ち、
「皆さん本日は、誠にありがとうございます。これから、教頭がビンゴをやりますので、皆さんよろしく。では。」
教頭と、教務主任が立ち上がりビンゴゲームがはじまった。
「やれやれ、にぎやかになったなぁ。前田さん、どうですか?」
「いや福井さん、ん、26?やったぁ、ビンゴや!」
そう叫ぶなり、前田は立ち上がり手をあげ、教頭のところに飛んでいった。
(ありゃりゃ、君子豹変すやな。ちょっと違うか?)
前田の豹変ぶりに、進二は思わず笑っていた。
しかし、ゲームが進むにつれ彼も周りの熱気に釣られ、思わず熱くなっていた。
「えっ、32?おっ、あと一つでビンゴや!こいよぅ。」
しかし、ふと、誰かの視線を感じ周りを見回したが、だれも進二を見てはいなかったように思えた。
(なんやったんやろ?誰かに見られてる感じが、したんだけど?)
首をかしげながら、ビンゴの数字を待った。
そして、
「へっ?54!ビンゴ!ビンゴや。」
カードを持ち教頭の方へ行きはじめた。
同時に、視線の主がだれか、
(えぇ、まさか昨日の?うそやろ!なんで?)
進二は息子の担任の女教師の視線と視線が絡まり合うのを、感じた。
(やだ、視線があっちゃった。でも、私、なんで、見ちゃったんだろ?)
かえでは、自分の気持ちが不思議でわからなかった。
ただ、借り物競争のとき、男の手が腰に触れた瞬間、電流が流れたように痺れ、このまま時間(とき)が止まって欲しいっと、、。
(なんで、生徒の親なのに、あの人のことが、、。わからない、、?)
進二は、賞品を受け取り自分の席に戻りながら、
(阿部先生だったな。まさか、ね?でも、あの時の感覚は、、いや、ないと思うわ。でも、試しても、損はないやろ。)
進二は自分の目の前のビールを取り上げ、阿部かえでの隣の去年の息子の担任の前に座った。
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