はじまり

5/11
前へ
/16ページ
次へ
帰り道、いつものように沈んでいく太陽を見て また今日が終わると感じる なぜだか悲しくなって涙が出てきそうになる ぽん、と後ろから肩を叩かれた 「家こっちなの?」 振り向くと彼が立っていた 「うん、佐倉くんも?」 初めて名前を呼んで違和感を感じた 「うん、一緒に帰ろ」 にこっと、引き締まった輪郭に無邪気な笑顔が過る 「う、うん」 何か話そうと思ったけど声が出ない 出したいけどそんな勇気がない 私達は無言のまま歩いた 自分の家に着いて彼を見る 「あ、」 っと言った時、彼とまた目が合った 澄んだ目が私を捕える 急に恥ずかしくなって思わず目を反らした 「じゃあ、また明日」 「うん、また明日。佐倉くん」 やっぱり違和感 苦しくなって家の中へ駆け込んだ
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加