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「はっ……! ここは……!」
流れる景色。揺れる吊革。赤く照らされる車内。気がつくと俺は電車に乗っていた。
慶佑によると、西條に思っくそ鳩尾を殴られた俺は気を失い、膝をつき、なんと後ろに倒れ始めたらしい。流石にマズいので慶佑と遥人がダッシュ、そして救出。気を失ってるうちに九死に一生を得て、今に至るらしい。
あと遥人が後ろで舌打ちする音を聞いたらしい。東條のものではないと切に願う。
「あれくらいで気絶するんじゃないわよ……」
「意外と軟弱なんだね、御堂君」
コイツらに反省ってもんを教えてやりたい。
でも、まあすっかりテスト明けってこともあってか失念していた。東條と西條は先程の言葉に些か不快感を覚えるようだ。……当たり前か。
にしても俺は女の子の拳で気絶したらしい。疲れていたのを差し引いても情けない。でもそれ以上に西條が恐ろしい。さっき食べたラーメンを西條に召還していようものなら間違いなく昇天だったな。よくぞ耐えた我が胃袋。
「はぁ……」
「わ、悪かったわよ……」
「や。今のはホッとしただけ」
「紛らわしいのよ!!」
えええぇぇぇええ! 今の俺が悪いの!?
「はいはい、詩織。その辺でな」
「むぅ……」
遥人がポンポンと西條の頭を撫でると一気に大人しくなった。全く、遥人には弱いらしい。世の中の不平等が身に染みる。
慶佑はすっげぇ楽しそうに東條と話してる。そういえば、東條は慶佑のこと名前で呼ぶよな。俺は御堂君なのに。案外脈アリなんじゃないか?
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