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ただ……
「どうやって2ヶ月も過ごしてたんだろうな……」
金髪は不良というイメージ、がないことはない。そして、この進堂なんちゃらは金髪だ。家出女子高生が仮に1ヶ月バイトしたとしても食いつないで行くには限界がある気がする。働いても給料なんて一月後だ。日払いってのも珍しいだろうしな。寝床もない。ニュースは友達の家には行ってないと報じている。となると……
「援こぐほぉ!?」
慶祐に鉄拳制裁。コイツには是非是非、拳に込めたオブラートの意味を汲み取って頂きたい。
そうなんだよなぁ……多感な年頃。反抗期。家庭不和があったなら考えられなくもない。
かわいいし。
まあ全部推測でしかないし、本人にも失礼だからこの辺りで自重するか。想像で妙な先入観を持つのは俺のポリシーに反する。ちなみに俺は金髪には偏見などなく、むしろ好みである。
「よし、そろそろ出るか」
時計を見ると、6時過ぎ。ちょっぴり長居しちゃったらしい。
「毎度! 三人で2160円になりやす」
1人ずつ勘定を済ませる。ふとテレビの方を見ると〝最近の若者〟という特集をやっていた。髪の色が緑のやつとか赤のやつとか。そういう若者に対して大人が何やら語ってるらしい。ホントどうなってやがる世の中。俺はいいと思うけど。
「ありゃーとーざーましたー! またのご来店お待ちしてやす!」
威勢のよいおやっさんや店員さん達の声を背に、ドアを開け店を出る。すると一気に蒸し暑さが帰ってきた。少し気温は下がったのかもしれないけど、疲れた体を労るつもりはないらしい。
街は夕焼けに煌めいていた。地の淵へと溶けていく太陽はとてもきれいだった。伸びに伸びた俺達の影は、3つ綺麗に今出た扉へと投げかけられる。
この店ならまた来てもいいな、と言うと慶佑と遥人は笑って頷いた。
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