-発端-

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  「でもさっきの子かわいかったなー」  慶佑のニヤける顔がなんかヤダ。ちなみに、今は店を出て、駅で電車を待ってる状況。人は疎ら。夕暮れでプラットフォームが赤く照らされている。 「まあ、確かにな。慶佑の好きなヤツと比べるとどっち「遥人もそう思うよな!?」  コイツ……逃げやがった。 「ははっ! 俺に振っちゃダメだろ!」  遥人が慶佑からのパスを笑いながらたたき落とす。慶佑は固まる。遥人は彼女いるからな。いわゆるリア充とやらか。 「ぐっ……! いいさいいさ! いつか俺だってぜってー告白してやんだからな!」 「へー。おもしろそうじゃない」 「ふぉう!?」  急に背後から声を掛けられる。慶佑がものすんごい速度で振り向いた。首押さえてんじゃねぇよ。痛いのかよ。 「おぉ詩織じゃん! 今日お前部活なかったんじゃないのか?」  噂をすればなんとやら、遥人君の彼女の西條詩織(さいじょうしおり)さんじゃあありませんか。俺達ほどじゃないが、日焼けした肌に笑顔が映える。陸上部短距離のエースだ。 「そうなの。だから夏樹と一緒に遊びに行ってたのよ」  西條の隣にいるのは東條夏樹(とうじょうなつき)。その凛とした佇まいに惹かれる男が多いとかなんとか。吹奏楽部。西條との対比で、白い肌が余計に透き通って見える。  2人はいつも一緒にいる。親友だ。ただ、余りに仲良くくっつくもんだから、その様子から、東條と西條の名前から〝東西の百合〟なんて呼び方が生まれた。余談ではあるけど、学校美少女ランキングの五番以内には二人とも入るらしい。(慶佑調べ) 「よう東條」 「あら慶佑君。こんな時間まで何してたの?」 「その……そこにラーメン屋あるって前言ってたろ?  そこで食べてた」 「「ふむふむ」」  慶佑は東條の前だと急に歯切れ悪くなる。照れてると言ったほうが正しいかもしれない。遥人と2人、頷き合う。  慶佑の顔が赤いのは日焼けと夕焼けのせいだろう。他にもあるのかもしれないが。いや、むしろそっちか。  慶佑には好きな人を聞いたり、何かといじって遊んでたけど。  コイツはたぶん、いや、やっぱりというべきか。  千崎慶佑は東條夏樹のことが好きなんだろうな。
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