-発端-

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   まあ、事実この2人の顔立ちはかなり綺麗だ。明朗快活な西條と優美高妙な東條。性格はかなり対照的なものに思えるけど、それが逆に2人を引き合わせているのだろう。羨ましい程の仲だ。 「じゃあな!」 「またね~!」  ガタンゴトンと電車に揺られて十数分。少し大きい駅。遥人と西條が電車を降りていった。俺達はこの2つ先の駅で降りることになってる。  慶佑と東條とは同じ中学。まあ俺もだが。故に、高校から知り合った遥人と西條よりは付き合いが長い。  だからといって仲がいいことには変わりない。なんだかんだで、5人でいることが多いのも確かな話である。付き合いの長短はあるが、それを感じるような場面は少ない。  通路を挟み、俺と慶佑、向かいに東條が座っている。  車内には俺達以外にも割と沢山の人。座れないわけじゃないが立ってる人もそれなりにいる。夕暮れの作るビルの影が、俺達の上を駆け抜けていった。  テストやべー、とか夏休みカモーンとか。そんな話をしている内に、俺達も駅に着いた。座っていた幸せを惜しみながら席を立ち、改札を通り、外に出る。外は既に夜が顔を出していた。  本当は慶佑はもう一つ先の駅で降りた方が家は近い。そうしないのは東條といたいからだろうな。単純で淡いね。にやり。 「じゃ、俺こっちだから」  駅の前でさっさと別れを告げる。そんなかわいい友の気持ちを汲んでやるのも紳士というものだ。 「そっか、じゃあ月曜日な!」 「ばいばい、御堂君」  なんというか、東條はおとなしいやつである。西條のようなバイオレンスが一切ない。是非見習って頂きたい。舌打ちは普通にしやがるけど。 「おう。じゃな!」  俺は1人で帰路についた。
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