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「ん。まあそれもそっか。じゃあ大雑把に話すから聞いてね。分からないことがあっても後でちゃんと話すから」
ちょっと顔を引き締めて彼女……リズでいいや。リズは話し始めた。聞き分けはいい方らしい。
「まずは昨日の夕方ね。君は〝私達の力〟を見た。それが全て事の始まりなの」
水と炎が踊るあの光景がフラッシュバックする。俺も集中して話を聞くことにしよう。
「その時、君は私の水に当たったよね? 正確には当てたんだけど……まあそれは置いといて……」
置いといてはならないことを言った気がしたのは果たして気のせいだろうか?
「あの水は少し特殊な水でね、う~んと……まあ〝魔力〟で出来た水なんだよ」
魔力―――てことはやっぱり……。
「でね、〝魔力〟は時間が経つと〝マナ〟―――〝魔粒素〟とも言うんだけど、とにかくその物質に分解されるの。〝マナ〟は〝こっち〟にはない物質だからね。微かに残るそれを追いかけてたらここにたどり着いたんだよ」
なるほどな。確かに濡れてしまったズボンは脱衣場に放置してあるし、しばらく階段でボーっとしてたな。だから、あえて水の弾を当ててきたわけか。
「ただ一つ問題があってね……」
なんだ?何か重大なことか?とか思ったけど、それは俺の杞憂に終わる。
「君が走って逃げたせいで私のところには何の情報もなし。あの男の事後処理があったから君の捜索は今日。〝マナ〟は空気と同じで風に飛ばされるから、できるだけ早く見つけないと発見は難しい。だから私はこの炎天下でこの界隈を走り回って走り回って……。そしてやっとの思いで見つけたと思ったら今度は不審者扱い……ッ!こんなことって……こんなことって……!!」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ(滝汗)
リズが俯いて膝の上で手をぷるぷる震わしている……
得体の知れないヤツとはいえ、女の子を泣かしてしまうというのは男として紳士としていかがなものか……ッ!
「わかったわかった! 侵入者とか言って悪かったって! 謝るからさ! とにかく顔上げてくれ!!」
俺がそう言うとリズはバッと顔を上げ、ニパッと笑った。あれ? コイツ泣いてねぇの?
「じゃあソレを私に作りなさいっ!」
心配した俺がバカだった 。
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