-日常-

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  「喜べ諸君。諸君らは今日を以てパラダイス(夏休み)へと向かうのみとなった。最後の試練、テスト返却と三者懇談を乗り越え、見事パラダイス(宿題はある)を掴んでみよ。では解散!」  武将かぶれの担任がホームルームを締める。  あぁ……やっと終わった……  定期テスト最終日。  全く何が楽しくてテストなんてせにゃならんのだ。これほど高校生を苦しませる時は他においてないと断言してくれよう。  ただでさえ授業に部活と単調なスクールライフをぬらりくらり謳歌しているというのに、それをもぶち壊すその諸行。一体どうして学校が正気であると言えようか。  反語で愚痴をこねくり回し、くだらない自己問答に勤しみつつ、鞄に筆箱をしまう。鞄の中には無駄な抵抗に使った教科書やノート。  いつも思うけどテスト直前にこういうのを見ると、安心どころか不安になる。この不可解な現象はなんだ。覚えてないところが多すぎる。確かに一度はやったのに。でも見ないと不安。難しい。  テストに対する開放感やら絶望感やらで教室はある種の阿鼻叫喚状態だった。早々にカラオケに出陣していった連中もちらほらいる中で、俺はラケットバッグを肩に掛け、ドアへと向かう。ついでに友人へと声をかける。 「コイツは……」  何やら机と一体になるまで突っ伏している。俺は机と一体になるようなヤツを友達に持った覚えはない。 「あーもしもし。聞こえますか?」 「…………」  返事がない。ただの屍だろうか? 「好きな食べ物は?」 「……ハンバーグ」 「好きなスポーツは?」 「……テニス」 「好きな人は?」 「言うかァ!!」  そこは自然な流れでお答え頂きたかった。  一体化を解き、ガバッと起き上がった人物。ちょっとボサボサの髪の毛と上の下くらいの容姿を持った同級生。俺の友人こと、千崎慶佑(せんざきけいすけ)である。
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