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落ちていくような、上昇していくような。そんな不思議な感覚が身体を覆う。浮遊感。
しばらしくして、身体を浮遊感が消える。
ウェストファリアに着いた……のか?
何も見えない。真っ暗だ。
いや、ごめん嘘。ビビって目閉じてるだけだった。
足から伝わるのは先ほどと違う感覚。硬くはない。だからといってフニフニしてるわけでもない。フサフサしているって感じ。
「何してるの? 着いたよ?」
左側から声が聞こえる。声の主は俺を異世界へと誘った張本人。
心配(?)してくれてるみたいだし、そろそろ目を開けようか。これが異世界への第一歩だ。
「おお………」
目を開けた。そこに広がる光景を見る。
広いな。
俺達が立っていたのは四方二十メートルはあるだろう部屋の白い壁のそば。赤い絨毯が床一面に敷かれ、一際目を引く大きなシャンデリアが部屋を照らしている。舞踏会とかやってそうな雰囲気がある。
シャンデリアから目線を壁に移すと、壁から人が多く出入りしている。そこに壁があるというのに人々は当然のように迷うことなく足を進め、壁の中へと消えていく。
「リズ……この人達は?」
「君と同じ境遇の人達。もちろん全員ね」
「これ全員か!?」
魔法の存在を知る人がこんなにいるってのか……。ざっと見ただけでも50人以上の人がこの場にいる。もちろんこれで全員なわけがないので、魔法を知る人はもっといることになる。魔法って結構知られてるんじゃ……。
「……魔法を知ってる人ってどれくらいいるんだ?」
「ん~。詳しくは知らないけど日本だけでも500人くらいはいるんじゃないかな?」
「ご……500人も……?」
ビックリだ。日本の人口からは見ればほんの少しに過ぎないけど、俺的にはかなり多い印象だ。つーか、500人が目撃するほどドンパチやってんのか……リズも苦労してそうだな。
「ふふっ、自分だけが特別だと思ったら大間違いだよ。〝ミドナ君〟。」
〝ミドナ君〟?
あっ、そうか。もうそっちの名前で呼ばれるのか。ミドナ……ミドナねぇ……
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