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「あ……足が……」
「肩が……抜けそう……」
「ははっ、お疲れさん!」
5時過ぎ。練習メニューをこなし、みんなが着替える部室の端に笑みを浮かべる爽やかフェイスと地に大の字で横たわる馬鹿2人。
あー、テスト明けからこんなに飛ばすなんて……阿呆か俺は。いや、阿呆なんだろう。
「ウォーミングアップの馬鹿ダッシュに、燃え尽きるほど全力のラリー。その後約3時間の通常メニュー。いやーお疲れさん!」
遥人がこっちを見下ろしながら言う。爽やかフェイスが今だけ恨めしい。
足ガクガクで横たわり、白色の天井を見つめていると窓越しに蝉の鳴き声が聞こえる。
そういや今夏だったか。夏休みっていつからだっけ?ああ、ミンミンミンミンうるさいなぁ。
「慶佑。この後海斗と飯食べにいくんだけど行かないか?」
ふるふると震える手で慶佑は返事する。命が無事で何よりだがそろそろ床とも一体化するかもしれない。
「にしてもお前らホントに接戦だな! 見てて楽しいぞ?」
楽しいねぇ……
テニスの実力。俺と慶佑はほぼ互角だと思ってる。番手こそ慶佑よりは下だけど劣ってるなんて思っちゃいない。まあ、遥人には勝てないんだけど……俺らを見て楽しいと思うってことは、逆に言えば、俺らには負けないという自信の裏返しとも取れるわけで、嗚呼ぶん殴りたい。
実際コイツムチャクチャ強いし! 全力で打った球めちゃくちゃ楽しそうに返してくるし! そんでその球めちゃくちゃ重たいし! 軟式なのに! 同じ高校生なのに!
「慶佑なんて……敵じゃねぇよ」
「なにおぅ!?」
遥人に勝てないやっつけの挑発に、慶佑がガバッと立ち上がる。あんな接戦しといてこんな安っぽい挑発に乗るなんて愉快な馬鹿だ。
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