#3 重なる二つの影

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「ここは昔、戦地に赴く侍を女の人が見送る場所だったって話ですよね」 「……あぁ、そういやそういう言い伝えのような歴史があったような」 「その言い伝えのせいでここでデートするカップルは必ず破局する!!って話もあるぐらいだからな!!!」 咲良の話から俺にはまだここが答えである確たる理由が見えてこない。 九條さんという女の子も同じだったらしく聞いてもいない情報を喋ったあとは次の咲良の言葉を待っていた。 「『君は涙を堪えて愛しい人を見送る場所』ーーとしては最適ですよね?」 「……そ、そんな簡単なことでいいのか??! って、待てよ!それじゃあサクラチルハルノゴガツっていうのが分かんないぞ!」 1つの答えは繋がったがもう1つの答えが出ていない。 俺はすぐさまもう1つの答えを咲良に促した。 「桜散る春の五月こそが、ここだと示す決定打なんですよ」 戦地へ見送る場所の観光地ってだけなら他にもいっぱいありますから、と咲良は付け加えたあとで更にそのまま続ける。
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